新卒者の離職状況を見てみよう

厚労省の平成25年版の白書によると、かつて7.5.3現象と言われた新卒の3年以内の離職状況(中卒7割、高卒5割、大卒3割)が25年度では6.4.3となっている。内訳詳細は、中卒が63.7%、高卒が40.9%、大卒が31.9%となっており、中卒・高卒は離職率が減少しているが、大卒3割をキープしている。大卒3割の内訳を探ってみると、1年未満が12.8%、2年未満が10.0%、3年目が9.1%となっており、1年未満の離職率が10年前より5ポイントほど減少しているのが目立つ。また、時系列的にみてみると約30年前で、28.4%、20年前で32%、10年前で35.9%となっており、その時の経済状況など景気動向により多少のアップダウンが見られる。では、なぜ大卒者でも3割が離職していくのか、規模別や業種別に検証していきます。

【新規学卒者の卒業後3年以内離職率】

○大学 31.9% 前年比0.4ポイント減
○短大等 41.7% 同0.2ポイント増
○高校 40.9% 同0.9ポイント増
○中学 63.7% 同1.6ポイント減

業種ごとに離職に差があるのでしょうか?

普通に考えて大企業や上場企業ほど離職率は低いのでは?と思いますよね。厚労省のデータを見てみると、あくまでも平均で30%という事なので、大企業はやはりと頷けますが30人未満の事業所では50%以上というのは二人に一人という事で、5年10年先ではもっと大きくなのでしょうか。

【事業所規模別大学卒業後3年以内離職率】

1,000人以上 23.6%
500~999人 29.2%
100~499人 31.9%
30~99人 38.6%
5~29人 49.9%
5人未満 59.0%

この現象は企業規模により、待遇や労働環境が影響することや大企業には組合や業界団体などが関係しているいえ安定した仕事ができると言えるでしょう。

やはりかつての「3K」は生きている?

厚労省は離職率の業種別データもキッチリとっていました。

【平成28年3月時点での満3年経った新卒社員離職率割合(平成25年3月卒)】

•宿泊業、飲食サービス業 50.5%
•生活関連サービス業、娯楽業 47.9%
•教育、学習支援業 47.3%
•医療、福祉 38.4%
•小売業 37.5%
•サービス業(他に分類されないもの) 36.4%
•繊維工業 36.3%
•不動産業、物品賃貸業 35.9%
•学術研究、専門・技術サービス業 32.2%
•木材・木製品、家具・装備品製造業 30.5%
•建設業 30.4%
•食料品製造業 30.3%
•卸売業 28.5%
•パルプ・紙・紙加工品製造、印刷・同関連業 27.3%
•運輸業、郵便業 26.0%
•情報通信業 24.5%
•金属製品製造業 24.0%
•複合サービス事業 23.2%
•その他の製造業 22.5%
•金融・保険業 21.0%
•飲料・たばこ・飼料製造業 20.3%
•窯業・土石製品製造業 18.5%
•非鉄金属製造業 16.2%
•鉄鋼業 14.5%
•機械関係 13.7%
•化学工業、石油製品・石炭製品製造業 13.2%
•鉱業、採石業、砂利採取業 12.4%
•電気・ガス・熱供給・水道業 8.5%

離職率業界1位は宿泊業、飲食サービス業(50.5%)、2位は生活関連サービス業、娯楽業(47.9%)、3位は教育、学習支援業(47.3%)。逆に低離職率業界1位は電気・ガス・熱供給・水道業8.5%、2位は鉱業、採石業、砂利採取業12.4%、3位は化学工業、石油製品・石炭製品製造業13.2%となっている。最近の学生人気企業が、残業がなく休みがちゃんと取れることというのが人気あるという事を見れば、宿泊業、飲食サービス業の場合は就業時間が長く不規則という事は免れないイメージがする。
逆に電気・ガス・熱供給・水道事業というのは、概して大企業独占事業であるが故の労働条件が良く勤怠も不規則になりずらい事が定着に由来するものと言えます。

折角大学行ったのになぜ3年で辞める?

やめる理由は人それぞれで、本人にとっては一生懸命考え悩んだ末の結論だったでしょう。そこで、では何故辞めたのかを厚労省のデータから見てみよう。

【仕事をやめた者の退職理由(%)】

退職理由
自分の希望する仕事ではなかったから 13.0 9.7
能力・実績が正当に評価されなかったから 21.1 21.0
給与・報酬が少なかったから 40.7 30.6
労働時間が長かった・休暇が少なかったから 30.9 29.0
通勤時間が長かったから 8.1 6.5
転勤が多かったから 0.8 1.6
一時的・不安定な仕事だったから 4.9 4.8
人間関係がうまくいかなかったから 13.8 21.0
会社の経営方針に不満を感じたから 30.1 32.3
事業又は会社の将来に不安を感じたから 31.7 24.2
その他

なお、民間企業がとった離職理由を併記しておこう。
厚労省のデータとは若干違って見えるが、厚労省の場合はハローワーク(職安)からのデータであろうからそもそもの基準違いも感じられる。

【リクナビNEXT】

1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
4位:給与が低かった(12%)
5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
6位:社長がワンマンだった(7%)
7位:社風が合わなかった(6%)
7位:会社の経営方針・経営状況が変化した(6%)
7位:キャリアアップしたかった(6%)
10位:昇進・評価が不満だった(4%)

【DODA】

1位:ほかにやりたい仕事がある(12.8%)
2位:会社の将来性が不安(9.7%)
3位:給与に不満がある(8.0%)
4位:残業が多い/休日が少ない(6.6%)
5位:専門知識・技術を習得したい(4.4%)
6位:U・Iターンしたい(3.5%)
7位:幅広い経験・知識を積みたい(3.0%)
8位:雇用形態を変えたい(2.7%)
9位:市場価値を上げたい(2.6%)
9位: 土日祝日に休みたい(2.6%)

【geechs(エンジニアの転職理由)】

1位:今の会社ではスキルアップが図れない
2位:会社からの給与待遇が悪い
3位:勤務時間、残業時間、休日数に不満
4位:職場の人間関係が悪い
5位:会社の将来性に疑問を感じた

退職理由を3つに大別すると「待遇・条件」「人間関係」「残業・休日」に集約される

いつの時代もこの3大離職理由は変わりないように思える。人類の永遠のテーマと言えよう。
小中高大と16年間にわたって良き社会人となるべく学習をしてきたわけで、その集大成が就職であった。