今回は最低賃金についてご紹介します。政府が示してきた水準と、実際の最低賃金がどのように推移しているのかを見ながら、地域格差などの問題点や、最低賃金を支払っていない場合の対策について解説します。
そもそも最低賃金とは?
最低賃金についてお話する前に、最低賃金とは何か?について説明します。
最低賃金とは、国が定めた制度で、使用者が労働者に支払わなければいけない賃金の最低額のことです。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
「地域別最低賃金」とは、都道府県に1つずつ定められたもので、各都道府県で異なります。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業に設定されている最低賃金のことで、「地域別最低賃金」と両方が適用される場合には、どちらか高い方が最低賃金となります。
最低賃金は正社員だけではなく、派遣社員、パート、アルバイトといったすべての労働者に適用され、時給換算した金額になります。
そして、この中には通勤手当や時間外労働といった割増賃金や賞与、臨時の賃金は含まれません。月給制の人は、1ヶ月平均の所定労働時間で割り、算出してください。
確認しよう!最低賃金を守らなかったらどうなる?
では、最低賃金が支払われていない場合はどうなるのでしょうか?
例え、使用者と労働者の間で時給を取り決めて、合意の上で契約していたとしても、その金額が最低賃金を下回っていたら、法律で無効となります。
使用者が最低賃金より低い賃金で雇用していた場合には、労働者にその差額を支払うことになります。もし使用者が差額を支払わないと、最低賃金法により50万円以下の罰金となります。
最低賃金に満たない賃金で雇用した場合は、使用者に罰則が与えられてしまうので、最低賃金の動向には気をつけてください。
また、労働者も自分の最低賃金を知ることで、最低賃金以上の金額が支払われているか確認しましょう。
全国的な最低賃金の推移
政府は、これまで年率3%程度の最低賃金の引き上げを促してきましたが、2018年度は具体的な上げ幅をはっきり示していませんでした。しかし、より早く全国平均が1000円になることを目指しており、企業側もその動向を注意深く見ているようです。
2018年度の最低賃金は、全国平均で「874円」で、過去最高となりました。前年比26円増しで、このまま3%程度の引き上げが続けば2019年度は900円を超え、2023年には1000円を超えることになります。
ただし、これは全国平均の金額であり、都道府県別に見ると18年度は40道県が全国平均を下回るという結果に。つまり、最低賃金は大都市では高いけれど、ほとんどの地域では全国平均に満たないということになります。
最低賃金の地域格差
最低賃金の最高額は東京の「1,013円」、一方で最低額は鹿児島の「790円」でした。差は200円以上もあり、1日8時間働くとして、1日で1600円、20日間で32,000円もの差になります。
地方から人口が流出する一因にもなっていると指摘されていますが、企業側としても簡単に引き上げられない難しさがあるのです。
全国平均の最低賃金は、この3年間で76円も上がり、使用者の負担が大きくなっていることも事実。今後大幅な最低賃金の値上がりがあれば、残業や一時金等を減らすことで対策する方向の企業も多数あり、最低賃金は上がっても、受け取れる給与が上がることに繋がらないという問題もあります。
福岡の最低賃金と業務改善助成金
気になる福岡県の最低賃金は、令和元年10月1日から「841円」になりました。これによって、企業の負担が増えることが予想されますが、「業務改善助成金」制度による助成を受けることができます。
助成金の概要は、『事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行った場合に、その費用の一部を助成します。』(引用:厚生労働省 福岡労働局 )
業務改善助成金の活用事例も掲載されているので、一部をご紹介します。
①サービス業(車検、自動車整備業 従業員数7人)
助成対象の「自動精算レジ機」を導入したところ、毎日現金精算処理を手作業で行っていたため、誤差など確認作業に時間がかかっていたのが、時間短縮され、事業場内最低賃金を40円引き上げた。
②卸小売業(健康者の販売 従業員数2人)
助成対象である顧客・商品管理システムを導入。取引先情報や商品在庫管理をエクセルで管理し、紙に出力して管理していたが、導入後は情報を一元管理できるようになり、情報検索がスムーズになり社内共有も円滑になった。結果、2人の事業場内最低賃金を100円引き上げた。
③医療・福祉業(保育園 従業員数29人)
助成対象は屋外対応電気式電気錠。園児の登下園時に、業務を一時中断して屋外の門を開閉していたが、解除カードやインターホンを設置したことによって職員の業務が軽減。2人の事業場内最低賃金を60円引き上げた。
他にも多数の事例がありますので、企業のみなさまは参考になさってみてはいかがでしょうか?
最低賃金以下の時給だったらどうする?
最低賃金法という法律は、1959年に導入されました。これによってすべての労働者が最低の賃金を守られるようになりましたが、働く人自身がきちんと把握しているかは疑問です。
都道府県により最低賃金は違うので、まずは自分が働いている地域の最低賃金を知りましょう。各都道府県の厚生労働省のHPから確認できます。
そして、大切なのは毎年最低賃金は改定されているということ。毎年10月頃に改定されているので、長く同じ賃金で働いているという人は、確認してみてください。
例えば、最低賃金で働いていて、今年の改定幅が+25円だったとしたら、今年の最低賃金を下回ってしまうことになります。
もし知らずにそのまま3ヶ月間働くと、1日8時間×月20日間で4000円低い賃金ということになります。
この場合、雇用主は速やかに差額を支払わなければ50万円以下の罰金が課せられ、かなり重い罰則を受けることになります。では、自分の最低賃金が下回っている場合、どうすればよいのでしょうか?
法律によると、労働者には最低賃金が改定された時点で、改定後の賃金を請求する権利があるとしているので、気付いたのが改定から数ヶ月経っていても差額を請求することができます。
直属の上司に申し出るのが通常でしょうが、言いにくいという場合もありますよね。その際の相談先は「労働基準監督署」です。
労働基準監督署は、訴えがあれば企業へ立ち入り検査を行う権限があり、違反行為に対する指導などが行える機関です。会社側に自分が言ったことがわからないようにしたい場合は、匿名でも相談できます。訴えたことにより不当解雇や不利益な人事などが怖いと思うかもしれませんが、その点も考慮して対応してくれるので、まずは相談してみましょう。
まとめ
最低賃金以下で雇用されないためには、まず仕事探しをする際に最低賃金の確認をしましょう。雇用側は、毎年改定される最低賃金を必ず確認し、対策をしてください。違反の罰則が重いので気をつけたいですね。はたらくぞドットコムでも、企業とはたらく人をより良く繋げるために、いろんな方面からサポートしています。