春、少し緊張気味ながらも意気揚々と入社してきた新入社員たち。中途採用者は、新しい職場にドキドキしながら期待もしていることでしょう。
しかしながら、新卒・中途採用ともに早期離職率は30%を越えている状況にあります。そもそも「早期離職」とはどのくらいの期間で辞めることを言うのでしょうか?
厚生労働省の調査では、毎年の入社総数に対して「1年間に入社3年以内で離職した人」の割合から離職率を出しています。そのため、一般的に「入社後3年以内」での離職が早期離職と呼ばれています。
企業としては、せっかく採用した人材がすぐに辞めてしまうのは大きな損失です。なんとか食い止めたいと思っている採用担当者や人事担当者も多いことでしょう。
今回は、早期離職を防ぐために、その原因を探り、対策まで考えていきたいと思います。
現在の早期離職率はどうなっている?
まずは資料から、現在の早期離職率がどのようになっているのか見てみましょう。
- 新卒採用の場合
参考:厚生労働省
このように、企業の規模や最終学歴でも早期離職率には差がありますが、平均すると、大卒で32%、高卒で39.2%という離職率になっています。
しかしながら、中小企業において新卒採用の早期離職は40%を越えていることもあり、大きな課題となりそうです。
- 中途採用の場合
中途採用の場合は、新卒よりさらに企業によっての差があり、統計を出すことは難しくなっています。正確な数字は不明ですが、中途採用の早期離職率は3〜5割ということも。
一度以上転職を経験しているだけに、早目に次の転職を考える人が多かったり、辞めることにそれほど抵抗がなかったりすることが、中途採用者の早期離職率が高い理由かもしれません。
まずは、早期離職の原因を探ろう
具体的な離職率がわかったところで、仕事を辞めた理由を追及してみましょう。これも新卒採用と中途採用で比較してみます。
- 新卒採用の場合
「独立行政法人 労働政策研究・研究機構」の資料によると、新卒採用者が退職した理由は以下の通りです。
- 肉体的、精神的に健康を損ねた
- 労働時間や休日、休暇の条件がよくない
- 人間関係がよくない
- 自分のやりたい仕事ではない
退職の理由として想像はつきますが、賃金条件がよくないという理由は、男性で24.3%、女性で18.7%と、意外に低かったことが特徴的です。
ショッキングなのは、女性の1位に「肉体的、精神的に健康を損ねた」という理由が挙げられていること。男性でもこの理由は2位となっています。
健康を損ねたはっきりとした理由や原因はわかりませんが、辞めた理由を総合した結果、健康を害することになったのかもしれません。
また、求人市場では「第二新卒」をターゲットにした求人も多く、辞めるのであれば早い方が、次の就職に有利という側面もあるようです。
- 中途採用の場合
リクナビNEXTによると、退職の理由のランキング上位5つは、以下のようになっています。
1位 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らない
2位 労働時間・環境が不満
3位 同僚、先輩、後輩とうまくいかない
4位 給与が低い
5位 仕事内容が面白くない
ここでもやはり、労働環境がよくないために体調を崩したという理由が2位になっています。
残業が続く、残業代は出ない、主業務以外の不具合が多くて能率が上がらないといった、労働時間や環境、それに伴う賃金といった理由がその内訳となっています。
新卒と違うのは、給与に関する不満が4位に入ってきていること。自分の能力が正当に評価されていないといった不満にも繋がっているようです。
職種別でこんなに違う!離職率の差
新卒と中途でも離職率は違うものですが、職種別に見ていくと驚くべき離職率の差があります。
参考:厚生労働省
上の表を見ると、離職率の高い産業の順位がわかります。
1位 宿泊業・飲食サービス業
2位 生活関連サービス業・娯楽業
3位 教育・学習支援業
4位 医療、福祉
5位 小売業
参考:厚生労働省
さらに上のグラフを見ると離職率の高い産業は、入職率も高いことがわかります。
つまり、離職率の高い産業は、入れ替わりが激しいという訳ですね。
しかし、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、医療、福祉、小売業に関しては離職率より入職率の方が高いため、わずかであっても定着している人がいると言えます。
逆に、教育・学習支援業や金融業・保険業、製造業では入職率より離職率の方が上回っており、全体的な働く人材の減少が心配されます。
このような、産業・職種の違いによる離職率の差は改善することが難しいと思えますが、入れ替わりが激しい産業であれば、いかに求人を工夫し、いかに定着させるかという対策が必要になります。
このことは、他の産業に対しても同じことが言えます。
つまりは、離職を防ぐためにできることは、採用の時点から始まっているということです。
次では、採用時にしておきたい離職防止対策と、入社後にできる離職防止策についてご紹介します。
早期離職を防ぐには?【採用編】
新卒でも中途でもよくあるのが、入社後の「話と違う」というギャップです。要するに、採用要件や採用基準が適切でないために、ミスマッチが起こってしまいます。
特にはじめて社会人として働き始めた新卒社員は、現実と理想のギャップにショックを受けます。これを埋めるには、最初のギャップをできる限り小さくしておくことです。
そのためには、現場のニーズをヒアリングして十分に理解し、現場の課題を吸い出して
- なぜ人材採用したいのか
- どのような人材が必要なのか
- 具体的にやってもらいたい仕事は何か
といった採用基準の設定を、徹底的にブラッシュアップしてください。
面接で、求職者の適性ばかりを見て、入社意向を高める努力をしていますか?
面接は、応募者を見定めるためだけではなく、自社情報を提供しながら「入社したい」と思わせる対応も重要になります。
面接官の印象はもちろん、受付や他社員の対応もポイントとなってくるので、社内全体で意識を持たなくてはなりません。
また、良いことばかりを言うのではなく、厳しい面も丁寧に伝え、応募者に自社で働くイメージを持たせることも大切です。
応募者も企業を選んでいますから、相互理解ができるよう、評価や期待もしっかりと伝えましょう。
早期離職を防ぐには?【入社後編】
早期離職を防ぐことは、定着率を高めることでもあります。求人でできる限り理想と現実のギャップを減らした後は、仕事をしていく上での不満を減らし、仕事への意欲を高める工夫が必要です。
まずは、離職理由の上位にくる「労働環境」「人間関係」といったことは、企業努力や人材教育によって少しずつ改善してみましょう。
次に、採用した人材に活躍してもらう場をつくり、問題解決と早期の成果をサポートする「オンボーディング」に取り組むことをおすすめします。
オンボーディングとは、新入社員が組織に早くなじみ、早く成果を出すことができるよう、組織的にサポートするという仕組みのこと。
具体的には、
- OJTで上司や先輩と業務を一緒にやりながら、業務内容をインプットする
- メンター制度(先輩が後輩に行う個別指導制度)
- ランチ会でチーム内交流をする
- 1on1ミーティングで上司と1対1でフランクに何でも話す機会を設ける
といったことがあります。
できることから、始めてみてはいかがでしょうか?
まとめ
働き方も専門性も多様化しつつある社会では、いかに優秀な人材を自社に定着させるかが課題となってきます。
オンボーディングをすることで、企業側にも働く人の要望がわかり、働きやすい環境作りの参考にもなります。
しかし、まずは求人の時点から離職を防ぐ対策は始まっていますので、今一度、採用基準の見直しなどしてみましょう。
地元企業に強いはたらくぞドットコムでは、採用に関するご相談も受け付けています。