助成金とは、国や地方公共団体、民間団体から支出されるもので、原則として返済不要のお金です。
企業に対しても、コストのかかる採用・雇用に関するさまざまな助成金も多数ありますが、あまり知られていないのも現状。
そこで今回は、企業向けの人材採用・雇用に関する助成金制度を紹介していきます。昨今のコロナ禍により、新たに追加された助成制度もあるので、該当する企業は積極的に利用してはいかがでしょうか?
中途採用等支援助成金
・概要
中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大を図った場合に助成金が支給されます。さらに、一定期間後に生産性が向上した場合には、追加で助成を受けられます。
中途採用の拡大とは、具体的に中途採用率を上げ、45歳以上の初採用または情報公表・中途採用者数の拡大を図ることとしています。
・受給条件
受給の条件は、以下の①の対象労働者を雇い入れ、さらに②③すべての措置をとることが必要です。
①支給対象者
(1)申請事業主に、中途採用により雇い入れられた方
(2)雇用保険の一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れられた方
(3)期間の定めのない労働者(パートタイム労働者を除きます)として雇い入れられた方
(4)雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、雇用関係、出向、派遣又は請負により申請事業主の事業所において就労したことがない方
(5)雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、申請事業主との関係が資本的・経済的・組織的関連性等からみて独立性を認められない事業主に雇用されていた方でないこと
②次の中途採用計画を作成して、管轄の労働局に届け出ること
(1)中途採用者の雇用管理制度(募集・採用を除く、労働時間・休日、雇用契約期間、評価・処遇制度、福利厚生など)の整備
(2)中途採用の拡大に取り組む期間(中途採用計画期間)(※)内の中途採用の拡大(※)中途採用率の拡大またはを図る場合は1年間、45歳以上の方の初採用に取り組むまたは情報公表・中途採用者数の拡大の場合は1年以下で申請事業主が定める期間
③中途採用計画期間に、以下の中途採用の拡大を図ること
(1)中途採用計画期間より前の中途採用率が 60 %未満の事業所が、中途採用計画期間内に支給対象者を2人以上雇い入れ、中途採用率を中途採用計画期間前と比較して 20 ポイント以上向上させること。
(2)中途採用計画期間より前に45歳以上の方を中途採用したことがない事業所が、中途採用計画期間内に45歳以上の方を初めて中途採用したこと。
(3)中途採用計画期間中、中途採用に係る定量及び定性情報を公表した事業所が中途採用計画期間内に支給対象者を10人以上(中小企業事業主は2人以上)雇い入れ、中途採用計画期間前と比較して上回っていること。
※引用元:厚生労働省「中途採用等支援助成金」
・給付額
中途採用拡大助成 | 中途採用率の拡大 | 1事業所あたり50〜70万円 ※中途採用率によって変動 |
中途採用拡大助成 | 45歳以上の初採用 | 1事業所あたり60〜70万円 ※雇用時60歳以上の対象労働者がいる場合は70万円 |
生産性向上助成 | 中途採用率の拡大 | 1事業所当たり25万円 |
生産性向上助成 | 45歳以上の初採用 | 1事業所当たり30万円 |
・申請方法
申請の流れは以下の通りです。提出先は労働局となります。
中途採用計画の届出
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計画内容の実行
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中途採用拡大助成支給申請
↓
生産性向上助成支給申請
UIJターンコース
・概要
中途採用等支援助成金のうちの、「UIJターンコース」です。地方での就労者を増やすことが目的であり、具体的には以下のような経費に対して助成されます。
- 採用や募集パンフレットの作成、印刷
- 自社ホームページの作成、改修
- 就職説明会、出張面接などの実施
- 外部専門家によるコンサルティング
・受給条件
以下の対象となる労働者を1人以上雇用すれば受給条件となります。
- 東京圏からの移住者
- 地方公共団体が開設するマッチングサイトに掲載された求人に応募した
- 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇用される
- 継続して雇用する労働者として雇用される
- 雇用後6ヶ月以上雇い続けられること
・給付額
中小企業 | 中小企業以外 | |
助成率 | 1/2 | 100万円 |
上限額 | 1/3 | 100万円 |
・申請方法
以下の流れで申請できます。支給申請の提出は、計画期間終了日から2ヶ月以内に提出します。ただし雇用日から6ヶ月以上経過していることが条件です。
採用計画書の提出
↓
採用活動・雇用
↓
支給申請の提出
トライアル雇用助成金
【一般トライアルコース】
・概要
ハローワークや人材紹介会社等の紹介で、特定の求職者を事業所が原則3ヶ月の試用期間を設けて雇用した際に支給される助成金です。一般的な試用期間との違いは、トライアル雇用には「本採用の義務がない」こと。企業と求職者の両方が適正判断後、合意のもとで本採用となります。
・対象者
- 紹介日の前日より過去2年以内に2回以上離職や転職をしている
- 紹介日の前日時点で離職期間が1年以上
- 妊娠・出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で1年以上安定した職業に就いていない
- 紹介日時点で、45歳未満、ニートやフリーターなどである
- 紹介日時点で、就職の援助をおこなうにあたり特別な配慮を要する(生活保護受給者、ひとり親家庭の親、日雇労働者、季節労働者、ホームレス、中国残留邦人等永住帰国者、住居喪失不安定修了者、生活困窮者)※35歳未満の対象者
※紹介日=ハローワークが職業紹介をした日
トライアル雇用助成金の受給条件は、いくつかの注意点があります。詳しくは厚生労働省の「トライアル雇用助成金」をご覧ください。
・給付額
対象者1人あたり月額最大40,000円
※トライアル雇用開始日から、1ヶ月単位で最長3ヶ月間
※対象者がひとり親家庭の母または父である場合や、35歳未満の場合は1人あたり月額最大50,000円
・申請方法
以下の流れで手続きをします。
ハローワークに「トライアル雇用求人」を提出
↓
対象者をトライアルで雇い入れる
↓
トライアル雇用実施計画書と労働条件が確認できる書類をハローワークへ提出
詳細は厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」を確認してください。
【障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース】
・概要
障害者の早期就職や雇用機会の創出を図るため、ハローワークまたは職業紹介事業者などの紹介により、事業所が一定期間トライアル雇用することで助成金が支給される制度です。
・対象者
- 継続雇用する労働者としての雇い入れを希望しており、障害者トライアル雇用制度を理解したうえで、障害者トライアル雇用による雇い入れについても希望している
- 障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のいずれかに該当すること
・紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する
・紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上
・紹介日前において、離職している期間が6ヶ月以上
・重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である
・給付額
対象者1人あたり月額最大40,000円
※トライアル雇用の開始日から1ヶ月単位で3ヶ月から最長12ヶ月まで
※精神障害者をトライアル雇用する場合は、月額80,000円×3ヶ月(トライアル雇用の開始日から1ヶ月単位で最初6ヶ月)
★障害者の職場適応状況や体調などによって、雇用時の週の所定労働時間を「10時間以上20時間未満」とし、トライアル期間中に週20時間以上を目指すのが「障害者短時間トライアルコース」です。
受給額は、月額最大40,000円となります。
・申請方法
以下の流れで手続きをします。
対象労働者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介で雇用する
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障害者トライアル雇用等実施計画書と雇用保険被保険者資格取得を提出
詳細は厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」で確認してください。
雇用調整助成金
・概要
景気の変動や産業構造の変化、その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために、一時的な休業や教育訓練などの雇用調整を実施した場合に助成される制度です。
・受給要件
受給するには、以下のすべてを満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業主であること
- 雇用調整を実施していること
- 受給に必要な書類を整備し、労働局に提出・保管して、必要に応じて提出すること
- 労働局等の実地調査を受け入れること
この他にも細かい受給要件がありますので、詳細は厚生労働省「雇用調整助成金」で確認してください。
・受給額
- 休業措置の場合……休業手当に助成率(※)をかけた額
- 教育訓練措置の場合……教育訓練実施時の賃金に助成率(※)をかけた額
- 出向措置の場合……出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額に助成率(※)をかけた額
※助成率は、中小企業は2/3、大企業は1/2
・申請方法
以下の手順で手続きを行います。
雇用調整計画書を労働局またはハローワークへ提出
↓
雇用調整計画書に基づいた雇用調整措置の実施
↓
雇用調整の実績に基づいた支給申請書を労働局またはハローワークに提出
新型コロナウイルス感染症対策トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース
・概要
新型コロナウイルスによって離職を余儀なくされた労働者で、離職期間が3ヶ月以上かつ就労経験のない職業に就くことを希望する求職者を、無期雇用契約へ結びつけるために新設された制度です。事業主に対象労働者を一定期間トライアル雇用することによって助成金を支給し、離職者の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ります。
・対象者
- 2020年1月24日以降に、新型コロナウイルス感染症の影響により離職した
- 紹介日時点で、離職している期間が3ヶ月を超えている
- 紹介日において、終了経験のない職業に就くことを希望している
この他にも細かい受給要件がありますので、詳細は厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」をご確認ください。
尚、新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコースは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満となります。
・給付額
新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース…月額最大40,000円
新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース…月額最大25,000円
・申請方法
以下の手順で手続きを行います。
ハローワーク等の紹介により対象者を雇い入れる
↓
原則3ヶ月のトライアル雇用を行う
↓
支給申請書を労働局またはハローワークへ提出
まとめ
対象者や受給要件を満たしていれば、ぜひ利用していただきたいこれらの助成制度。企業だけでなく、求職者の雇用にも繋がる制度なので、役立ててくださいね!