「年間休日」について正しく知っていますか?
労働条件を確認する重要な指標のひとつですが、給与だけ見て転職を決めると、年間休日が少ないために結果的に時給換算で給与が下がってしまうこともあります。
年間休日は求人票に記載することが必須ではないため、見落としてしまう人も多いのです。年間休日については、入社前に企業に確認してみましょう。
求人票の休日表記はさまざまなものがあるため、年間休日で大体どれくらいなのかも紹介します。
年間休日と給与の関係をよく考慮し、求人票を見る際の参考にしてみてくださいね。
年間休日とは
年間休日とは、企業や事業所が決めている1年間の休日数のこと。労働基準法を守っていれば、年間休日を何日にするかは経営者が決めてよいことになっています。
ですから、職場によって年間休日が違うのですね。
労働基準法の原則で「使用者(雇用者)は、労働者に対して毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」という“法定休日”のほかに、各職場の就業規則で夏期休暇や年末年始休暇、祝日などが年間休日に含まれていることがあります。
年間休日の平均
厚生労働省の資料によると、2018年(平成30年)の年間休日総数の平均は114.7日、1企業平均では108.9日です。
いずれも前年の調査より1日増えています。
これが2019年(令和元年)になるとさらに増え、労働者1人平均116.0日、1企業平均109.0日となっています。
会社の規模別でも年間休日の平均を見てみましょう。
従業員数 | 年間休日 |
1000人以上 | 116.6日 |
300〜999人 | 114.9日 |
100〜299人 | 113.0日 |
30〜99人 | 108.0日 |
このように、会社の規模が大きいほど年間休日も多いという傾向がわかります。
同調査では、年間休日が120日以上ある会社は31.8%。このうち、従業員数が1000人以上の企業では51.5%、100〜299人の規模では37.6%、30〜99人の規模では28.0%となっており、会社規模によって差があるようです。
以上のことから、年間休日120日以上ある会社は「休日が多い」、逆に105日の会社は「休日が少なめ」と言うことができます。
引用:厚生労働省「平成31年就労条件総合調査」、厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」
年間休日の最低日数は?
年間休日は会社が定めるものではありますが、労働基準法によって労働時間の上限は決められています。
労働時間は週40時間が上限、さらに1日に8時間が上限とされているので、ここから年間休日の最低日数を算出してみます。
週40時間という労働時間の上限から、1年間の労働時間を計算すると2085.7時間。
これを1日の上限である8時間で割ると、1年間の最大労働日数は260日になります。
最大労働日数を365日から引くと、年間休日の最低日数は「105日」となります。
しかし、これは1日8時間の所定労働時間の場合です。会社によって所定労働時間が違うため、所定労働時間が短ければ年間休日数も少なくなるので注意してください。
土日祝が休みだと年間休日はどのくらい?
「完全週休二日制」と言われても、年間休日にすると何日くらいになるのかピンとこない人も多いでしょう。
「完全週休二日制+祝日」の場合、年間休日は大体120日になります。しかし「完全週休二日制」だと年間休日は104日となり、大きな差があるので注意しましょう。
よく求人で見かける年間日数の目安を紹介するので、求人票を見る際には気をつけて見てみましょう。あくまでも目安ですから、実際に就職を決める際には、会社に確認してくださいね。
- 125日以上…完全週休二日制・祝日+夏期休暇・年末休暇等が付与
- 120日…完全週休二日制・祝日
- 110日…完全週休二日制+夏期休暇・年末休暇等が付与(土曜日は隔週出勤/月1回だけ土曜日も出勤など)
- 104日…完全週休二日制
有給休暇は年間休日に含まれるの?
有給休暇は年間休日に含まれるのでしょうか。2019年に法改正されたことも併せて解説します。
休日と有給の違い
労働において「休日」と「休暇」は明確に違います。
「休日」とは、労働基準法による法定休日と、就業規則によって定められた公休日のことで、原則として従業員は働く義務がありません。
一方で、「休暇」は公休日ではなく従業員は働く義務がある日に、会社が労働義務を免除する日のことです。
休暇には「法定休暇」と「特別(任意)休暇」があり、以下のように区別されます。
- 法定休暇…法律上一定の要件を満たせば必ず付与する休暇 年次有給休暇(有給)、育児休業、介護休業、看護休業など
- 特別(任意)休暇…就業規則などに基づいて任意に付与する休暇 夏期休暇、年末年始休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇など
有給休暇は「法定休暇」にあたるため、必ず与えなければならない休暇なのです。
有給休暇は年間休日に含まれない
有給休暇は労働基準法によって定められた法定休暇であるので、条件を満たす従業員すべてに与えることが義務化されています。
正社員だけでなく、
- 雇用日から起算して6ヶ月以上継続勤務している
- 上記6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤している
という条件を満たしていれば、契約社員やアルバイト・パートでも有給を付与しなければなりません。
有給休暇は個人によって取得できる日数やタイミングが違うため、会社が決める「公休日」にはならず、年間休日には含まれません。
年間休日とは別に、有給休暇があるということになります。
義務化された有給休暇
2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の改定により、年間10日以上の年次有給休暇が付与される者に対しては、年間5日以上の年次有給休暇の取得が義務づけられました。
これにより会社側に有給休暇を取ってもらう必要が生じたため、これまで自分で取得日を決めていた有給休暇のうち、5日間は会社が指定することになりました。
有給休暇義務化の背景には「労働者がそれぞれに合った多様で柔軟な働き方を選べるようにする」という働き方改革があります。
労働者の生産性を上げ、働く意欲や持っているスキルを十分に発揮できるよう、これまで取得率が低かった有給休暇にスポットが当たりました。
国が動いたことにより、より働きやすい環境づくりをしようとワークライフバランスを見直す企業も増えています。
多忙を理由になかなか有給休暇を取得できなかった人も、会社が取得日を決めることで休めるようになったということです。
【有給休暇の付与日数】
勤続勤務年数 | 付与日数 |
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月 | 20日 |
まとめ
求人情報で「休みが多い会社だと思っていたのに実際は違った」というのは、年間休日や休暇制度をよく確認しないことで起こります。
年間休日を正しく知り、内定承諾の返事をする前に、会社に年間休日や休暇制度についてよく確認しておきましょう。
例えば、「週休二日制」となっていても、月のどこかで週に2日間の休みがあれば、ほかの週は週1日の休みでも「週休二日」となります。
後悔しないためにも、休日・休暇制度を含めた労働条件は、しっかり確認することが大切です。