春は入社や移動なども多く、新しい環境で仕事を始める人も少なくありません。新しいオフィスに音楽はかかっていますか?
仕事の効率化やリラックス環境づくりなど、オフィスに音楽を取り入れることで、働きやすい空間を演出する企業が増えています。
今回は、オフィス音楽の具体的な効果や、メリット、注意点などを解説します。快適なオフィスづくりの参考にしてみてください。
オフィス音楽を流すメリット
オフィスで音楽をかけるとどのようなメリットがあるのでしょうか。BGMについても説明します。
そもそもBGMとは?
まずはBGMそのものの効果について見ていきましょう。BGMとは「background music」の略で、背景音楽とも呼ばれます。映画やドラマなどで背景に流す音楽や、店内・病院・駅などで雰囲気の醸成のために流す音楽のことです。
そもそものはじまりは、1930年にアメリカのミューザック社が、無音状態よりBGMがあった方が工場やオフィスなどでの生産性が上がることに着目したことだと言われています。
オフィス音楽のメリット
多くの職場ではオープンスペースであらゆる雑音が耳に入ってくる状態です。図らずも聞こえてきてしまう雑音によって集中力がとぎれ、作業効率が悪くなるとされ、さらには電話や会話が漏れ聞こえることでプライバシーが損なわれることも。
「個」の空間が少ないオフィスだからこそ、BGMのメリットをうまく活かした快適なオフィス環境づくりが注目を浴びています。
オフィス音楽の効果
それでは具体的なオフィス音楽の効果を見ていきましょう。効果別に使い分けができると良い環境づくりに反映できそうです。
集中力アップ
音楽があった方が生産性が高まるのは、日頃から慣れているルーティンな仕事をするときです。音楽があることでリラックスしつつも集中できるため、生産性がアップするようです。
ある研究では、外科医が手術室で音楽を聞くとオペの精度が上がったという結果もされているほど、音楽の効果が注目されています。
ただし、新しい仕事を覚えたり、複雑で緊張を強いられたりする仕事の際には、音楽がない方が良いこともあります。
リラックス効果
オフィスでは無意識のうちに緊張している人も多いでしょう。オフィスにおけるメンタルヘルス対策は、国としても取り組むほど必要に迫られています。
「音楽のストレス解消効果」という論文でも発表されているように、音楽には不快感を軽減する効果があり、心理的ストレスの減少が見られたとされています。
ハードな仕事をこなしながらも、オフィスに音楽が流れていることによってリラックスできると、従業員の心身の健康を守ることにも繋がります。
参照元:音楽のストレス解消効果
コミュニケーション促進
例えば飲食店に入った時、BGMが何も流れていないと違和感を覚えた経験をしたことがありませんか?友だちとの会話も弾まず、かえって落ち着かないのは、無音状態だったからかもしれません。
オフィスにおいても、無音でシーンと静まりかえっていたりすると、用事がある場合でも話しづらいことがあります。会話がしにくいことは、ストレスにも繋がってしまい、ついイライラしてそれを相手にぶつけてしまうことも。
オフィス音楽が適度な音量でかかっていれば、和やかな雰囲気となり、自然に言い回しや言葉選びもポジティブな傾向に。円滑なコミュニケーションができることで、オフィスの雰囲気がよくなる相乗効果も期待できます。
マスキング効果
マスキング効果とは、2つの音が同時に重なったとき、片方の音が掻き消されて聞こえなくなる現象のことをいいます。周波数が近ければ近いほどマスキング効果は高くなり、周波数が低いともう一方の音を消す効果が高くなります。
例えば、TVを付けるとエアコンの音が聞こえなくなる、ホテルでBGMを流すことで他人の生活音が気にならなくなるなどは、マスキング効果です。
これをオフィスにも利用すると、パソコンの打鍵音が気にならなくなる、人の話し声がうるさく感じないといった効果に繋がります。ノイズが耳に入らなくなることにより、集中力が高まって仕事の効率が上がることが期待できます。
また、会話を聞かれる可能性も低くなり、プライバシーを守るという配慮にもなります。
オフィス音楽のデメリットもある
オフィス音楽はメリットの部分も大きいですが、一方でデメリットもあります。導入する前に、デメリットを把握しておくことで、不満を減らすことができます。
選曲が難しい
音楽のジャンルは多種多様です。万人が好む音楽を選ぶことは至難の業とも言えるでしょう。オフィスには20代から60代以上まで幅広い年齢層が働いていることを考えても、すべての従業員が心地良いと感じる音楽を選ぶことはかなり難しいと言えます。
また、誰もが知っている・聞いたことのある曲がかかると、曲の方に意識がいってしまい集中力が途切れてしまうことも。例えば心身の健康面にモーツァルトは良いとされていますが、知っている曲も多いため注意が必要です。
部署ごとに合うBGMを選択する必要がある
オフィスでは各部署によって、仕事の内容が異なります。集中して作業を行う部署と、営業のように人の出入りの激しい部署とでは、必要な音楽は違います。
また、受付や応接室のような場所では、来客にもBGMがその企業のイメージとなる可能性もあるため、慎重に選曲しなければなりません。イメージダウンにならないよう、ふさわしい曲を選ぶのは難しいものです。
オフィス専用BGMサービスを利用すれば、選曲からすべてお任せできますが、コストがかかるというデメリットがあります。
オフィス音楽を導入する際の注意点
オフィス音楽を従業員が選曲して流す場合には、いくつか注意しておきたいことがあります。
著作権侵害
オフィスで音楽を流す際に気をつけたいのが著作権の侵害に当たらないかどうかです。
クラシックなどの著作権が消滅しているもの、著作権フリーの音楽、ラジオなどの放送をそのまま流す場合には、著作権は問題ありませんが、その他は基本的にすべての音楽に著作権が存在すると思ってください。
著作権を管理している「日本音楽著作権協会(JASRAC)」は、以下の場合については音楽使用の許諾手続きは不要としています。
- 福祉施設での利用
- 医療施設での利用
- 教育機関での利用
- 事務所、工場等で主に従業員のみを対象とした利用
- 露店等での短時間で軽微な利用
オフィスでは従業員のみを対象としていれば許諾は必要ありませんが、来客が訪れる場合や店舗兼オフィスとなっている場合などは必ずJASRACに許諾申請を行いましょう。最悪の場合、法人に対する罰金は3億円という刑罰になることがあります。
なお、オフィスBGM専用のインターネット配信サービスなどを導入する際には、著作権を考慮する必要はありません。
音量
オフィスの通常の雑音にもよりますが、大きすぎるBGMはかえって不快に感じたり、集中力が途切れたりしてしまいます。
とはいえ、小さすぎるとリラックス効果やマスキング効果といった、メリットまでなくなります。
一般的にはオフィスBGMの音量は40〜50デシベルが最適です。静かなオフィスと同程度の音量なので、オフィス音楽のメリットを活かせるでしょう。
まとめ
オフィス音楽には仕事の効率を上げたり、リラックス効果があったりと、多くのメリットがあります。著作権や選曲、音量などに注意しながら、働きやすい環境づくりのために、オフィス音楽を有効活用してみてはいかがでしょうか。