ハローワークの求人に「トライアル雇用」という記載があるものを見たことがありますか?求職者と企業のミスマッチを防ぎ、助成金が受け取れることもある「トライアル雇用」を詳しく解説していきます。
「試用期間あり採用」との違いや、求職者・企業のどちらにもあるメリット・デメリット、トライアル雇用への挑戦の仕方や助成金についてもまとめました。
仕事を探している人も、採用担当者も、ぜひ記事を参考にしてみてくださいね。
(※2022年4月時点)

トライアル雇用とは

トライアル雇用とは、就業経験が少ない人や前職からブランクがある人、障害者などを対象にした雇用機会を創出するための制度です。原則的に3ヶ月という短期間の“お試し”期間を設けて雇用し、その後仕事への適性を見ながら本採用へ移行することを目的としています。
ただし、求職者なら誰でも対象というわけではありません。

基本的には、就業経験が浅い35歳未満の人、子育てや病気、介護などによって長期間ブランクがある人、障害者などの救済措置として設けられています。
試用期間中には、一定条件を満たせば政府から企業へ「トライアル雇用助成金」が支給されます。

「試用期間あり採用」と「トライアル雇用」の違い

「試用期間」とは、入社した社員に対して一定の期間を設け、実際に業務を遂行できるスキルがあり、社風にマッチして戦力となれるかを企業が判断するものです。決められた期間はなく、企業が試用期間をどれくらいにするか決定できます。
試用期間終了後は本採用となることが前提であり、ほとんどの場合は試用期間が終わっても採用されます。そもそも、入社した社員に対する「試用期間」なので、企業側が解雇したい場合には正当な理由が必要となります。

一方「トライアル雇用」は、原則3ヶ月という期間が設定されており、期間終了後に必ずしも採用しなければならないという義務もありません。
つまり、双方の合意がなければ本採用しなくても問題ないということになります。求職者にとっては「合わなければ入社しない」、企業にとっては「納得できなければ本採用しない」という選択がしやすいと言えるでしょう。

トライアル雇用のメリット・デメリット

トライアル雇用には、求職者にも企業側にもメリットとデメリットがあります。良い部分だけでなく、デメリットの部分もきちんと知ることが大切です。

求職者側のメリット・デメリット

求職者にとってのメリットは、ブランクがある、働いた経験自体があまりないといった人などにとって応募しやすいということです。働く意欲はあるのに、さまざまな理由から就職が難しい状況にあり、なかなか採用に至らず苦労している人には、おすすめしたい制度です。
また、働く前に職場の雰囲気や業務内容を体験できるため、本当に自分に合う会社なのか、仕事なのかという点も見極めやすくなります。約8割がトライアル雇用から本採用へ移行していることを考えても、トライアル期間が有効であると言えます。

デメリットとしては、3ヶ月のトライアル期間後、必ずしも本採用が約束される訳ではないということです。不採用になると、3ヶ月で解雇という職歴も残ってしまいます。
トライアル雇用の応募は1カ所にしかできず、当然ですがトライアル中は他の求人に応募することはできません。トライアルとはいえ、応募先は慎重に選ぶ必要があります。

企業側のメリット・デメリット

「試用期間あり採用」は、社員として雇用した後に行う試用期間ですが、「トライアル雇用」は3ヶ月のトライアル期間後の本採用への移行は義務ではありません。
そのため、求職者の適性やスキルをしっかりと見極めた上で本採用を行うことができるのが最大のメリットです。
万が一合わないと思った場合には、3ヶ月で契約解除することができるため、雇用義務のリスクがありません。
また、要件を満たしていれば助成金も支給されます。採用コストをかけずに、採用活動ができることもメリットです。

デメリットは、申請からトライアル雇用の開始、終了後と、各種書類処理があること。各段階で必須の対応となるため、その間の業務管理を行わなければなりません。
さらにトライアル雇用には、経験が浅い人材の応募が多いと見込まれるため、即戦力となる人材を求めるのは厳しいと予想されます。採用後の育成が重要となるため、人材育成の体制を整える必要があります。

【求職者】トライアル雇用に挑戦するには?

トライアル雇用に挑戦したいと思ったら、ハローワークや雇用関係助成金を取り扱う同意書を労働局に提出している職業紹介事業者などの紹介を受けて「トライアル雇用求人」に応募する必要があります。自分で直接応募することはできないので注意してください。

ハローワークインターネットサービスを使うと、トライアル雇用求人を簡単に探せます。気になった企業をよく検討して、「この企業のトライアル雇用求人に応募したい」旨を、ハローワークなどの窓口で相談してみましょう。

【企業】トライアル雇用求人を出すには?

トライアル雇用をしたいと希望する企業は、ハローワークか雇用関係助成金を取り扱う職業紹介事業者等に、事前に「トライアル雇用求人」を提出します。
すでに掲出している求人を「トライアル雇用求人」に変更することも可能。ただし、トライアル雇用助成金の支給を受けるには、満たさなければならない要件があります。
詳細は次の項で説明します。

トライアル雇用助成金について

トライアル雇用助成金には、「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」の2つが設けられています。それぞれの受給条件について紹介します。(※2022年4月時点)

一般トライアルコース

  • 支給額:雇用1人あたり月額最大40,000円 ※対象者が35歳以下の場合は、月額最大50,000円
  • 支給期間:最長3ヶ月間

【支給対象者】
・就労経験がなく、職業に就くことを希望している
・学校卒業後3年以内で、卒業後安定した職業に就いていない
・過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
・離職している期間が1年以上
・妊娠・出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就かない期間が1年以上
・就職の援助を行うにあたり、特別な配慮を要する(生活保護受給者、母子家庭の母、日雇労働者、ホームレスなどが該当)

【事業主の主な受給条件】
・ハローワークや職業紹介業者の紹介で雇用をする
・原則3ヶ月間のトライアル雇用を実施する
・1週間の所定労働時間が社内労働者と同程度で30時間以上
・過去6ヶ月以内での事業主都合の解雇がない
・労働者名簿や賃金台帳などを労働基準法の規定に沿って管理している
・過去に労働保険料の滞納がない など

参照元:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

障害者トライアルコース

・支給額:雇用1人あたり月額最大40,000円
 ※対象者が35歳以下の場合は、月額最大50,000円、精神障害者を初めて雇用する際には月額最大80,000円 
 ※週20時間以下のトライアル雇用は、月額最大2万円)

・支給期間:最長3ヶ月間
 ※精神障害者のトライアル雇用は6ヶ月まで延長可能 
 ※精神障害者や発達障害者で週20時間以下のトライアル雇用は、最長12ヶ月間)

障害者トライアルコースについての詳細は、厚生労働省のホームページにて確認してください。
参照元:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」

まとめ

社会人経験の浅い求職者にとって挑戦しやすいトライアル雇用。企業にとっても適性をしっかり確認してから雇用でき、助成金も出る制度です。大いに活用して、良い人材と企業がめぐり会うチャンスにしてみてくださいね!