異例の早さで梅雨が明けた2022年。急に気温が上がったことで、熱中症のリスクが懸念されます。
今一度、熱中症に対する正しい知識と、職場における予防について確認しておく必要があります。
今回は、職場における熱中症対策について、企業ができること、各自ができることを紹介します。命にも関わる熱中症、甘くみずにしっかり対策をしましょう!
熱中症について
まずは熱中症とは何か、どのような症状なのかを知っておくことが大切です。
熱中症の症状
熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分や塩分が失われてバランスが崩れたり、体温調節や循環調節などができなくなったりして発症するものの総称です。
症状としては、軽度なものでめまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛、こむら返りなどがあります。ひどくなると頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力・判断力の低下などが起こり、重度になると意識障害や痙攣発作、肝・腎臓機能障害などとなり、入院加療が必要になります。
放置すれば最悪の場合、命の危険性もあるため用心が必要です。
熱中症の発生状況と業種別発生状況
厚生労働省が発表した、2012〜2021年の過去10年間の職場における熱中症発生状況は、年平均で死傷者数639人、死亡者21人となっています。
これを業種別に見ると、熱中症の発生が多いのは以下の業種になっています。
- 建設業
- 製造業
- 農業
- 運送業
- 警備業
- 商業
さらに、月別に見ると死傷者が最も多いのは7月と8月。死傷者の80%以上がこの2ヶ月に集中しています。
特に屋外で仕事をする業種や、空調のない場所での労働は気をつけなければいけません。
熱中症警戒アラート「WBGT値」とは
熱中症対策においてよく耳にするのが「WBGT値」というもの。これは「暑さ指数」と呼ばれるもので、気温・湿度・輻射熱の3つを取り入れ、暑さの厳しさを示す指標です。
気温とは異なるため混同しないようにしましょう。
環境省と気象庁が一体となり「熱中症警戒アラート」を広く発信しており、各自治体の取り組みとの相乗効果で危険を知らせる取り組みを行っています。WBGT値を活用して、正しく熱中症対策を行いましょう。
WBGT値の目安は以下の通りです。「℃」で表されますが、気温ではないので間違わないよう注意してください。
【WBGT値(暑さ指数)】
- 21〜25℃……注意:積極的に水分補給
- 25〜28℃……警戒:積極的に休憩
- 28〜31℃……厳重警戒:激しい運動は中止
- 31℃以上……運動は原則中止
- 33℃以上……熱中症警戒アラート発表
【熱中症対策】企業が気をつけること
厚生労働省では『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』と題して、職場での熱中症対策の徹底を図っています。特に熱中症への警戒が必要な職種では、厚労省の施策に則ってしっかり取り組みましょう。
参照元:厚生労働省『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』
作業環境・休憩所の設置
WBGT値が「警戒レベル」では30分おきの休憩、水分・塩分の補給を、「厳重警戒レベル」では10〜20分おきの休憩、水分・塩分補給を推奨しています。
また作業環境の把握を事前に行い、WBGT値を下げるための休憩場の設置、水分・塩分が補給できる準備などが必要です。ミストなどを設置や冷たい濡れたタオルを首にかけるなど、身体を濡らすことも効果的。
特に熱中症が多い7〜8月は頻繁な休憩と対策をしてください。
作業計画の策定
WBGT値によっては、作業を中止したり休憩を多く取ったりする必要が出てきます。夏期においては余裕を持った作業計画を立て、時間帯によって異なる作業をするなど、工夫をしてみましょう。
涼しい服装を推奨する
衣類の種類によっても熱中症リスクが大きく変化することが指摘されています。作業服やつなぎ服を支給している場合は、素材や形状を今一度見直して、通気性に優れた素材や色を選びましょう。
吸水性・速乾性がポイントとなります。
おすすめの素材は、綿、麻、ポリエステルです。また、白や淡い色は熱を吸収しにくいのでおすすめ。フードは付いていると熱中症リスクが上がります。
また、肌着は着けた方が汗の蒸発を助け、熱中症予防になります。
熱中症発症時の措置と周知
万が一、熱中症を発症した場合の正しい措置方法を従業員全員で把握できるよう、レクチャーと周知を徹底しましょう。
迅速な対応をとることで、重症化を避けることができます。
【熱中症の措置】
①めまい、筋肉痛、大量の発汗、吐き気、嘔吐など、熱中症を疑う症状があり、意識があれば、涼しい場所へ避難させ、服をゆるめて身体を冷やします。冷やすポイントは首筋、脇の下、股関節です。
もし、意識がない場合には、上記応急処置を行いつつ救急車を呼んでください。
②水分・塩分を補給します。経口補水液を少しずつ飲むのが効果的です。自力で飲めない場合には医療機関へ。
③上記の措置をして症状がよくなったとしても、安静にして休息をとり、回復したら帰宅しましょう。症状が改善しない場合には医療機関へ行きます。
【熱中症対策】従業員が気をつけること
企業が努力すべき熱中症対策もありますが、従業員が自ら気をつけることで、熱中症を予防できることもあります。
前日のアルコールは控えめに
アルコールは利尿を促進させるために、脱水症状を引き起こす原因となります。仕事の前日に大量のアルコールを摂取していると、朝の時点ですでに水分不足の恐れが。
さらには、飲酒は眠りが浅くなりがちで、睡眠不足による熱中症リスクもあります。真夏はビールが美味しい時期ではありますが、翌日の仕事に備えて控えめにしておきましょう。
食事をしっかり摂る
暑いときには食欲が減退し、冷たいものや食べやすいものばかり食べがちです。しかし栄養素が足りていないと汗と一緒にミネラルなどが流出してしまうため、熱中症になりやすくなります。
食事はバランスよくしっかり摂り、仕事当日の朝食は特に抜かないようにしてください。
バナナやほうれん草、梅干し、パイナップル、豚肉、卵は、熱中症対策におすすめの食材です。
水分・塩分をこまめに補給する
仕事中は喉が渇いていなくても、こまめに水分・塩分を補給しましょう。喉が渇いたと感じたときには、すでに脱水が始まっている状態と言えますので、その前に補給することが大切です。
また、大量の汗をかく作業の場合には、水分だけ、塩分だけの補給にならないよう気をつけてください。
スポーツドリンクは手軽に水分と電解質が補給できますが、同時に糖分も多く含まれているため、糖分過多にならないよう注意しましょう。
まとめ
熱中症は命を脅かすこともあるものです。職場では7〜8月に特に多く発生するため、企業側も従業員1人ひとりも、熱中症対策をしましょう。
熱中症に対する、正しい知識と正しい措置方法を共有し、暑い夏を元気に乗り切りましょう!