学生から社会人になり、初めて働いたお金を受け取る初任給。親の扶養から外れ、経済的に自立する節目でもありますね。
しかしながら給与には「額面」と「手取り給与」があり、その違いを知っておかないと就職後に「思ってたより少ない」ということになります。
この記事では、就活生に知ってもらいたい初任給のことや、さまざまな視点からみた初任給の平均額、世界と比較した日本の初任給などを紹介。
大切な初任給、しっかり理解して大切に使いましょう!

初任給とは?

就活時には、業種や仕事内容だけでなく、必ずチェックする給与。特に学生から社会人への転機となる初任給は、経済的に自立するためにも大切なものです。初任給に関する知識を、しっかり持っておきましょう。

卒業後初めての給与=初任給

学校を卒業し、就職して初めて受け取る給与のことを初任給といいます。これまで親に扶養されていた人が経済的に独立し、健康保険料や所得税、住民税などを自分で支払うようになります。
1人暮らしを始めるなら、給与の中から生活費のすべてを捻出することになるため、初任給をもらったらしっかり管理していく必要があります。

一般的に給与は銀行振込され、支払いは銀行引き落としか電子マネーという時代だからこそ、給与の内訳や生活にかかる費用は把握しておくべきです。

「基本給」と「手取り額」とは?

初任給は銀行口座に振り込まれますが、「給与明細」というものを渡されます。それには「基本給」という項目がありますが、これは一定期間の労働によって必ず支払われる給料です。
つまり、各種手当やインセンティブなどは含まれておらず、保険料や税金なども差し引かれていない状態の給与となります。
基本給の決め方には、主に以下のようなものがあります。

  • 仕事給式……仕事内容や職務遂行能力、業績、成果などで基本給を決める方法
  • 属人給式……学歴、年齢、勤続年数などの指標で基本給を決める方法
  • 総合給式……基本的に属人給式をベースに実力や実績の仕事給式を加えて算出する方法

この基本給に、通勤手当や残業手当などの手当が加算され、そこから健康保険料や税金などが差し引かれたものが「手取り額」となります。

注意したいのは「額面(総支給額)」は「基本給+各種手当」のことであり、健康保険料や税金などが引かれる前の金額であるということ。
「額面(総支給額)」だけを見ていると、初任給をもらった際に「思ったより少ない」とがっかりすることになります。

初任給にプラスされるもの、差し引かれるもの

気になるのは「基本給」に何がプラスされ、何が差し引かれるのかですよね。残った「手取り額」が給与として振り込まれる金額なので、このあたりは就職前にしっかりチェックしておきましょう。

【基本給にプラスされるもの】
一般的に、各種手当と呼ばれるものです。会社によって、手当の有無や手当の額は異なります。

  • 通勤手当
  • 残業手当
  • 住宅手当
  • 役職手当
  • 資格手当
  • 家族手当

【額面(総支給額)から控除されるもの】
控除とは、給与から差し引かれるものです。一般的な企業に勤めるのであれば給与から天引きされますが、起業したり個人経営したりするのであれば、これらを自分で支払う必要があります。

  • 健康保険料
  • 介護保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 所得税
  • 住民税

【全国版】求人を探す
<都道府県を選ぶ>

基本給が低いと損をする?

額面(総支給額)が高いからと、安心してはいけません。なぜなら、基本給はボーナスや退職金などに反映され、最終的な生涯年収に差が出てしまうからです。
ボーナス(賞与)は、法律で支給が義務付けられていないため、必ず出さなければならないものではありません。通常ならボーナスが出る企業でも、業績や社会情勢によって増減することはあります。

このボーナスの査定は、一般的に基本給を基準にしていることが多く「給与の○ヶ月分」という表現は、額面ではなく基本給の○ヶ月分ということになります。
つまり、基本給が低いとボーナスも低いということになります。

同様に退職金も支給が義務づけられておらず、支給は基本給によって算出されることが多いのです。
また、1日8時間以内、週40時間以内と定められている法定労働時間を超えて働く「時間外労働手当」も、基本給を基準に算出されるため、時間外労働が多い仕事なら、基本給が低いともらえる手当額も低くなってしまいます。

注意したい「みなし残業」について

みなし残業とは、毎月一定の残業を行ったと“みなし”、基本給に固定残業代を含めている賃金制度のことです。
つまり、実際にどのくらい残業したかに関わらず、最初から「残業をした」とみなして基本給に残業代が入っているのですね。

営業職のように会社側が労働時間を把握しにくい場合や、最近増加している在宅勤務にはメリットも大きい制度ですが、注意点もあります。
それは、みなし残業時間の超過分が支払われない可能性があるからです。

みなし残業の超過分は、割増賃金を支払う必要があるため、労働者自身で何時間残業をしたかはきちんと把握しておかなければなりません。
休日出勤や深夜労働も、割増分を合わせて考慮する必要があるので、みなし残業が何時間と想定されていて、その手当がいくら分基本給に含まれているのか、しっかりと把握しておきましょう。

初任給の平均額

他の人はどのくらいの初任給をもらっているのか、気になりますよね。志望する企業を絞り込むために、初任給の平均額を知っておくことは大切です。さまざまな視点から、初任給の平均額を見てみましょう。

学歴別の初任給平均額

学歴男性女性
大学院修士課程修了23,9000円238,300円
4年大学卒業212,800円206,900円
高専・短大卒業184,700円183,400円
高校卒業168,900円164,600円

参照元:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況1 

男女ともに学歴が高いほど初任給の額も高くなっています。高卒と大卒では男女平均して43,100円もの差があります。

企業規模別の初任給平均額

 大企業中企業小企業
大学院卒242,000円232,100円229,300円
4年大卒213,100円208,500円203,900円
高専・短大卒185,600円183,600円183,200円
高卒168,500円166,100円168,600円

参照元:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況2 

同じ学歴であっても、企業の規模によって初任給の額にも差が出ています。しかし、高卒では大企業の方が小企業よりも100円少ないという逆転現象もあります。

産業別の初任給平均額ランキング

  • 1位:建設業 206,880円
  • 2位:情報通信業 205,830円
  • 3位:学術研究、専門・技術サービス業 205,030円
  • 4位:教育、学習支援業 200,730円
  • 5位:卸売業、小売業 198,900円
  • 6位:製造業 197,980円
  • 7位:金融業、保険業 196,200円
  • 8位:サービス業(ほかに分類されないもの) 197,680円
  • 9位:運輸業、郵便業 193,950円
  • 10位:医療、福祉 192,700円
  • 11位:宿泊業、飲食サービス業 178,680円

参照元:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況3 

この結果は大学院卒から高卒までのすべての初任給を平均したものです。専門性の高い分野では初任給が高い傾向にあります。ただし、世界情勢の動向や産業の景気などにより、その後の給与に差が出る可能性もあります。

【全国版】求人を探す
<都道府県を選ぶ>

日本の初任給は少ないの?世界から見た日本の初任給

日本の初任給は世界のランキングでは20位。
大卒の初任給トップはスイスで約73万円、次いで2位デンマークは約53万円、3位のアメリカは約48万円となっています。
日本の大卒平均は約21万円ですから、かなり低い水準と言えます。

お隣の韓国は19位ですが、それでも約30万円あります。他国の初任給は徐々に上がっているのに対し、日本の初任給は過去20年間でほとんど変化がないのです。
アジアで20位までに入っているのは韓国と日本だけではありますが、シンガポールなどアジア各国が猛追しています。かつての「経済大国ニッポン」を取り戻すためにも、若い力に期待されます。

まとめ

就活生にとって、初任給をもらう日は楽しみですよね!就活する際には、給与の構成や注意すべきことに留意して、求人票を正しく読み取りましょう。